erinitaの日記

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カルロスフエンテス著《Aura》のまとめ、感想


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いまスペインの大学で、ラテンアメリカ文学を学んでいるのですが

はてなブログ先先週のお題(笑)
読書の秋に際して、
今日はAuraについて考察します🍁





まずAuraとは



簡単なあらすじまとめ

メキシコの自称歴史家の少年フェリーぺは仕事の広告に目を留める。それはコンスエロ夫人の家に住み込みで、リョレンテ将軍の回想録を編纂するという内容のものでだった(コンスエロ夫人はリョレンテの未亡人)。広告でありながらも、それは自分にしか向けられていないと不思議と感じたフェリーぺは、そこで働くことを決める。

コンスエロ夫人の屋敷は、暗く時計もなかった。まさに私たちに流れている時間概念が存在しない場所。屋敷に入ると、フェリーぺはアウラという緑色の目をした綺麗な少女に出会い、彼女の美しさに恋をし性的な関係を持つ。一方、屋敷に入って以来、フェリーペは、アウラがコンスエロ夫人の孫というにはあまりにも近すぎる関係なことに疑問を抱いていたが、うまく理由を見出すことができないでいた。さらにフェリーペはアウラと関係を持った後から、何度も自分自身の姿を鏡で確認するようになる。

リョレンテ将軍の回想録を読みフェリーペは、リョレンテ将軍が若き頃のコンスエロの美しさに恋をしていたということを知る。更に、コンスエロ夫人が美と若さに恐ろしいほどの執着心を持っていること、そしてアウラは彼女の執着心が投影された姿であることに気づくのであった。アウラとコンスエロ夫人は、どちらも美しい緑色の目を持っていた。ある日、フェリーペの腕に抱かれたアウラは、老婆コンスエロへと姿を変え、フェリーペはリョレンテ将軍へと姿を変え、二人は結ばれるのであった。








ん~~ラテンアメリカ文学はやはり難しい。




とはいえ、アウラで大事な点は、円環する時間構成です。私たちが知っている時間概念とは全く違った時間概念が物語のなかに存在しているわけです。

コンスエロ夫人の部屋にあるホルマリン漬けの心臓なんかは不気味極まりないですが、これは死と再生を繰り返すものとしての象徴になっているのです。



そして閉ざされた屋敷に入ることによってフェリーぺは夢と現実を区別することが出来なくなってしまいます。時計もない、外との繋がりが断絶された空間のなかでは従来の時間概念が機能しないんです。これが、フェリーぺが自己を消失し、リョレンテ将軍に生まれ変わることに拍車をかける要因のひとつになってしまいました。





ちなみにここで、切り離して考えることができないのが、アウラの存在。フェリーぺが美しさに惚れた若い少女のことです。

ですがこのアウラが、実はコンスエロ夫人の執念が投影された姿なわけです。
美しさと若さへの執念。



作品アウラでは、この執念が鍵を握ることになりますが、執念って恐ろしいですよね。

不可能なことを可能にしてしまうんですから。

執念に支配された心では、きっと何を言っても響かないのではないかと考えます。執念が持つ力は偉大で、ある種の魔法のよう。

それが物語では美しい少女アウラの姿として現れたのです。




そしてフェリーぺは、アウラと結ばれて以来、何回も鏡で自分の姿を確認するようになります。

というのもそれ以降、自己のアイデンティティーを消失してしまうような気がしたから。そんな焦燥感に駆られたが故の自己確認行動です。



アウラの著者カルロスフエンテスに影響を与えたオクタビオパスは

El encuentro erótica es la primera experiencia de la pérdida de identidad.
(性的な出会いは、自己を消失する初めての経験である)

と述べています。



欲に溺れてしまうという意味もあるのでしょう。


しかしながら相手を欲するあまり、自己のアイデンティティーが消失するというのは、さほど私たちから遠い話でもないと思います。



例えば身近な話に例えると、恋は盲目なんてものがそうなのかなと思います。

悪い部分も含めて好きになるっていうのはもう愛なので別です。
普通に第三者なら誰がみてもそう思うような悪い部分に気づかない、もしくは気付いても見て見ぬフリをするということ。
自己のアイデンティティーが確立されていれば、冷静な目で見ることも可能ですよね。

とはいえ、当事者間にしか分からないことがあるのも事実ですしね、第三者の意見も大事とは言え、なかなかそうするのが難しいのが人間なのですが。


色々考えちゃいます。







まとめとして、アウラにおいては終わりのない円環的な時間構成と、性的な結び付きによる自己の消失、執念深さがキーを握っています。

そして、カルロスフエンテスは、この作品において、魔術的レアリズム(Realismo Magico: 夢と現実を混同させて書くラテンアメリカ土着の性質に由来するラテンアメリカ文学独自の表現技法)を用いた物語を描くことによって、人間の性を明らかにしているのです。







erinita